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ロシア大手銀行を国際決済網から排除、米欧が追加制裁(写真=ロイター) - 日本経済新聞

【ベルリン=石川潤】米欧は26日、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網から排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。各国政府が発表した。ウクライナへの侵攻以降、段階的に制裁を強めてきたが、さらに大規模な制裁が必要と判断した。国際決済網の国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する。ウクライナ侵攻が一段と深刻になり、慎重姿勢だった欧州連合(EU)が強硬姿勢に転じた。

米英独仏イタリア、カナダの6カ国と欧州委員会が合意した。

SWIFTからの排除の対象になるのは、これまで金融制裁の対象となっていたロシアの大手銀行のほか、必要に応じてほかのロシアの銀行も追加する。SWIFTから排除された銀行は、ロシア国外のすべての国との送金が事実上できなくなる。ロシアの全銀行を対象にしたSWIFTからの排除は、欧州経済への影響が大きすぎるため見送った。

さらにロシアの中央銀行にも制裁を科し、外貨準備を使って金融制裁全体の効果を弱められないようにする。ロシアの通貨ルーブルの下支えを難しくする考えだ。

米欧日はロシアがウクライナに侵攻してから段階的に制裁を強めてきた。米国はロシア最大手のズベルバンクや2位のVTBバンクなど主要5行、日本は軍需に強いVEBバンク、プロムスビャジバンク(PSB)、バンクロシアの中堅3行を対象に資産凍結や取引停止などの制裁を科す。制裁対象のロシアの金融機関は同国の銀行資産全体の8割を占める。

ロシアの金融機関は世界で1日あたり約460億ドル相当の為替取引を手掛け、その8割が米ドル建てだ。SWIFTは全世界で1日あたり4200万件の送金情報を扱っており、このうちロシアの金融機関は2020年時点で1.5%を占めている。

SWIFTは世界中の銀行が出資する民間の非営利団体で、金融機関同士の決済や送金指示といった情報をやり取りする国際インフラだ。SWIFTから排除されてもメールやファクスで送金情報を連絡できるが、セキュリティーが不完全なうえに膨大なデータを手作業で送信することになり決済情報の伝達ルートとしては極めて脆弱になる。そのため、SWIFTは国際的な金融制裁の道具に使われることが増えている。

イランの核開発計画で緊張が高まった12年と18年は、同国の銀行がSWIFTから排除された。12年当時は米欧共同でのイラン制裁だったため、本部がある欧州連合(EU)がSWIFTにイランの銀行の排除を求めた。18年は米国が単独でイランの50銀行を制裁対象とし、同国と取引すればSWIFTにも制裁を科すとしてSWIFTがイランの銀行のアクセスを遮断した。

SWIFTから締め出されたイランの国内総生産(GDP)は12年にマイナス7.4%、18年もマイナス6%といずれも前年のプラス成長から暗転した。18年は通貨リアルが6分の1に下落し、原油を中心とした輸出も3分の1に落ち込んだ。

SWIFTからの排除は制裁の効果を高める半面、ロシアからガスなどを輸入する海外の買い手にも痛手となる。ガスなどの決済ができなければ輸出入は止まり、資源価格の高騰に一段と拍車がかかる可能性がある。ドイツとイタリアの天然ガスのロシア依存度は5割前後と高い。

米中央情報局(CIA)によると、ロシアの輸出額は20年に約3800億ドル。19年時点の主な品目は石油や天然ガス、石炭など資源が中心だ。輸出相手国は中国(14%)、オランダ(10%)、ベラルーシ(5%)、ドイツ(5%)で欧州が目立つ。ロシア向けの与信残高はイタリアやフランスなど欧州勢が7割を占める。ロシアへの金融制裁は欧州の銀行リスクになるため欧州中央銀行(ECB)など当局との連携も必要になる。

ロシアは14年のクリミア侵攻時に経済制裁を受けたことで、SWIFTに代わる独自のネットワーク「SPFS」を立ち上げた。ただし利用はほとんどがロシア国内金融だといい、SWIFTを代替できる状況ではない。中国も15年に人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)を導入した。

現地の日本企業への送金は影響が限られそうだ。三菱UFJ銀行など3メガバンクはロシアに現地法人を持っている。ズベルバンクなどロシアの銀行を介さずにグループ内で取引できるため、制裁によって送金ができなくなることは現段階ではないという。

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